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Moon Child

PBWシルバーレイン内に生息中、暴走弾丸娘ソーマ・アビルーパの戯言保存場所です。 シルバーレインという名前や、PBWという言葉に心当たりのない方、ソーマのお知り合いでない方はお戻り頂いた方が身のためかと。
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2017/09/20
21:52
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2013/06/18
22:00
異国の空の下で

こんにちは、背後です。

いや、実際今は夜なんですが、気分的にこんにちはで。

ぶっちゃけ、半年以上文章書いてないので支離滅裂です。

しかし、これ以上のものは書けないと踏んだのであげます!

お読みくださる方には、お目汚し、お許しください。

※この内容は、月読馨の恋人、山田アスカさんのブログとリンクしております。
なお、こちらだけ読んでも支障はありません。

 



 米国、某所――。
 延々と続くかのような広大な大地を切り裂くように敷き詰められたアスファルトの道。
 リミッターをカットした愛用の単車ですら、瞬時に駆け抜けることは難しい。
 摂氏30度を超える大気は、今まで育ってきた極東の空気とは明らかに違い、かつて戦いに臨んだ折に己の体を燃やした炎の熱さにも似ている、と、時折思う。
 道路脇に魅惑的な肢体を露わにしてビールを掲げる女性の看板を見つけ、彼女は単車を停めヘルメットを脱いだ。
「――メリッサ」
 高校を卒業後、念願叶いスタントマンとして職に就くことになった彼女は、他のスーツアクターより秀でた身のこなし、攻撃の型、そして偶然目撃されたヒーローの仮面下の素顔がネット上で公開されるや、一躍スターダムを駆け上がることとなった。
その技量は、銀誓館時代に知り合った――彼女自身は師とも仰ぐほど、尊敬する先輩――を、追いかけ入門した道場で手に入れることとなったものだろう。
 しかし、日本国内から『近年まれにみるアクションスター』と評された彼女曰く『結局彼に届くことはなかったから、誰に評価されてもそれは“嬉しいこと”でしかないらしい。
 彼女が求めてやまなかったのは、気高いまでの強さ、速さ。そして、大事なものを守る為に自らを前に出す心の強さ――。

大きな看板で微笑む美女は、彼女が日本でアクションスターとして活躍を続け、海外進出を勧められ渡米した折に知り合った女性だ。
 自分はアクションスター。彼女は女優をめざし、ともにオーディションの舞台にも立った。
『わたしね、女優じゃなくてもいいのよ。わたしは、スターになりたいの。有名になって、弟や妹たちを楽にさせてあげたいの』
 よくある話なのかも知れない。
 彼女――メリッサの母親は娼婦で、ハーレムで客を取っていた。
 父親は、わからない――。
 母は女手一つで子供たちを育てていたが、近年体を壊し他界した。
 残された弟妹を養うのは自分の役目だと、メリッサは言う。
 境遇を羨むでもなく、自然と受け入れ、幼い弟妹の事を思えるメリッサの笑顔は、眩しかった。

 そんなメリッサが、――消えた。
 
 その報が届いたのはメリッサが失踪してから数か月の後だった。
 それからは、撮影の合間に単車を走らせ―時にはエアシューズで、広大なアメリカの大地を駆け抜け、探し続けた。
 けれど、いまだ彼女は見つかっていない。
「待っていてね、必ず――見つけ出すから」
 強い意志のこもった碧い瞳が、メリッサの微笑を見つめる。
 こんな事件は日本にいた時でもよくあった。
 その時は、『依頼』という名で関わっていたが、必ず見つけ出す、必ず助ける。その思いは変わらない。

「――ん?」
 突然、影が彼女を覆った。
 振り返り、空を見上げると大きな鷲が悠然と翼を広げ舞っている。
「あら、綺麗。――あにさまが喜びそう、ね」
 タンクに着けていたバッグの中からデジカメを取り出し、シャッターを切る。
 慣れた手つきでデータを転送すると、携帯のメモリーから日本で喫茶店を経営する彼にメールを送った。
『綺麗な鳥でしょ。あにさま、好きかと思って』
 絵文字も何もなく、短文なのも彼女らしいというところだろうか。
『送信完了』の表示に微かに微笑むと、携帯を仕舞おうとバッグに手をかける。
その時、仕舞うなとばかりにコールが鳴り響いた。
「え、あにさま? ――まさかね」
 今まさにメールを送った相手からの連絡だろうかと、通話ボタンを押す寸前に液晶画面で発信元を確認すると、彼女はため息を一つもらし、――携帯を“さかさま”にして、通話ボタンを押した。
「はい、ソーマです」
『そおぉぉぉちゃぁぁぁぁぁぁ』
「――何よ、馨。久しぶりね」
(携帯の受話部分を遠ざけるため逆さまに持っておいて、本当によかった)
 今までの雰囲気をぶち壊さんばかりの叫び声に、ソーマは自らの対処能力に心の奥で拍手を送っていた。
『あのねぇ、あのねぇ!! アスカが作ったけぇき食べたら歯が欠けてぇ!! キラキラしたのがぁ、どどーんってどどぉぉんってぇぇぇ!!』
「……ちょっと待って馨。さすがに付き合いが長い私でもよくわからないわ。アスカさんが作ったケーキを食べて歯が欠けたのを報告したいの?」
『ちがっ!! ちがうのぉ!!』
 どうやら受話器の向こうの騒音の主は大変混乱しているらしく、普段でもよくわからない言語を扱うのに、それに拍車をかけて訳が分からない。
「だって今、歯が欠けたって言ったじゃない」
『それはそぉだけどぉ!! そこじゃなぃんだってばぁ!! あのね、あのねぇ。ぷっ、ぷっ、ぷっ――』
「……携帯でにらめっこする趣味はないけれど」
『ちがぁぁぁぁぁ!!』
「血が、じゃなくて、歯でしょ? 何がいいたいのよ」
 その後、平静を取り戻した馨から、事の顛末を聞かされる事となった。惚気を含め、数時間かけて。


 10月17日、馨はその日、23歳になる。
「また年が離れちゃぅなぁ」
 ドレッサーの椅子に腰かけ、ヘアアイロンで巻き髪を作りつつ呟く。
 恋人の山田アスカは、1学年下。誕生日は、5月である。
 つまり、馨が10月に誕生日を迎えると、年齢差は更に開く。
「そんなの気にしてんの? ってゅわれるけどさぁ、気になるじゃんねぇ」
 外出中の恋人から年齢差の話をする度に言われる言葉を思い出し、頬を膨らませる。
 自分が年下だったなら、在学中に――能力者である間に、共に戦場に立つことも出来たのだろうか。
 年齢差に拘る所以でもある、自分の能力をソーマに引き渡したことは、永遠に付きまとう後悔でもあるのかもしれない。
「でもねぇ……、仕方ないんだよねぇ」
 そっと自分の太腿を撫でる。其処にあるのは、開けられた風穴の痕。
痕は一生残るし、多少動きにも支障が残っている。
これは、組織に投降した時、ソーマを救おうとして受けた傷だ。
自分より傷が浅かったソーマ。彼女だけなら逃げられると、力も命も投げ出した。
馨の力を引き継いだソーマが能力を爆発させ、組織を破壊殲滅に至らしめ、重い傷を負った馨を助けだし手当てをした。
長い長いこん睡状態。誰もが――自分さえも、諦めかけていた命を引きもどしてくれたのは、紛れもないアスカである。

 その時のことがなければ、今でも友達――もしくは、もう連絡も取っていなかったかもしれない。
 彼は『あーちゃ』であり、馨は『馨サン』でしかなかった筈だ。
 だから、この傷は愛しいものであり、『今』は、奇跡だとも思う。
 しかし、『年上彼女』とか、『でも、彼氏の方が年上に見えるね』とか、『もうちょっと大人の女って感じにならないと捨てられるんじゃない?』とかとかとか! 言われるのは面白くないのである。
「もぉぉぉぉ!!! アスカったらぁぁぁぁぁ!!! 家だとぐーたら寝てばっかの癖に、女の子が居るとすぅぐかっこつけるんだからあぁぁぁ!!」
 ――哀れ、何の罪もない恋人は、不在中に罵られるのである――。

 そんなこんなで暴れつつも、もうすぐ夕方である。
 相変わらず優柔不断が祟って準備が遅い馨は、あわてて服を着替える。
「今日は誕生日祝いってゅってたもんねぇ。家でパーティでも、ちゃんとしておかなくちゃぁ」
 ドレッサーの引き出しをあけると、奥の方に手を突っ込んで取り出したものたち。
 綺麗に巻いた髪を高く結ってピンクの貝があしらわれた簪を刺し、その横に色とりどりのトンボ玉がついた髪飾りを飾る。
 キラキラ光るガラス球はオレンジだったり赤だったり、紫だったり。
「アスカ、気付くかなぁ?」
 ドレッサーの一番上の引き出しにはさらに奥がある。
 おそらく、貴重品などを仕舞う場所なのだろうが、馨はそこに宝物を隠していた。
 部屋を片付けるのが苦手な彼女は、同時に物をなくす名人でもある。
 だからこそ、大事なものはそこにしまうことにしていた。
 今までに、アスカからもらったプレゼント――。
 さすがにエプロンや食器は入れられないけれど、アクセサリーの類は、必ずここにしまっていた。
 今つけたものも、彼から貰った大切な宝物だ。
 纏め髪に満足すると、次は洋服を探す。クローゼットから取り出しては鏡の前であわせ、不満げな顔をしてまたクローゼットに戻り……。
 一時間後、漸く決まったのは一番最初に着た白のミニワンピである。
「ふわわわわぁぁ、もうこんな時間だぁぁ!!」
 ほっとして時計を見て驚く。もうすぐアスカが帰ると言っていた時間になろうとしているではないか。
まぁ、大抵は出がけにトラブルという名の足止めにあって予定時刻より遅くなるのだが、そうだろうと高を括ってもいられない。
「えぇと、服を片付けてぇ、テーブル綺麗にしてぇっ」
 誰に話しかけているわけでもないのだが、独り言とは思えない大声で喋りながら片づけをし、簡単に掃除機をかける。
一通り、自分も含め体裁を整えたところで、馨の耳がぴくんと動く。
「ぁ。帰ってきたぁ」
 アスカの運転する車のエンジン音。車庫入れで切り返すタイミング、減速の加減、バックする時のアクセルの踏み加減など、馨の耳は完全に記憶していた。
 ソファから立ち上がり、玄関へと向かう。
 聞こえてくるのは、アパートの階段を上がる靴音。
「おかえりぃ」
 アスカが鍵を取り出すより先に扉を開け、出迎える。
「ただいま。相変わらず耳いいな」
 いつもの事なので、アスカはたいして驚きもしないが、音に関する敏感さは、流石は元フリッカースペードというところだろうか。
「アスカの音は覚えてるもんねぇ」
 にこぉ、と、嬉しそうに笑う馨の髪にそっと触れるとアスカは室内に足を踏み入れた。

(さて、と。どうやってこれを違和感なく渡すかだよな)
 携えた紙袋の中には、色とりどりの生クリームでデコレーションされたカップケーキが10個、箱詰めされている。
生クリームの上には、飴細工で作られた指輪が乗せられている……1個だけ、本物だが。
(全部食った最後に残ったら……気付かずに食いそうだよな、馨)
 キッチンでお茶を入れる馨の後ろ姿に目をやる。細い脚、細いウェスト。背も高いのでモデルのオファーがあったこともある。身内からだが。
その姿から想像もつかないものが、彼女の胃袋だ。星児と二人並べば(もう一人ライバルがいるらしいが、会ったことがないので割愛する)、その場にあるすべてを食べつくすのではないかと思わせる驚異的な食欲。まさに、人間版星のカービィ。
頼むから、ダイヤの指輪をかみ砕いたりせずに、無事思いを伝えさせてくれと、願わずにはいられなかった。

「お茶、入ったよぉ。今年はどんなけぇきぃ??」
 キッチンで馨が手招きをする。慣例ともなる、彼女の誕生日祝いのアスカの手作りケーキ。今年はどんなものかとわくわくしているようだ。
「今年はカップケーキ。俺は食わなくてもいいし、好きなだけ食べて」
「あぁ、またそんなことゅってぇ! アタシの作ったお菓子は食べるのに、自分が作ったのは食べないんだもんねぇ。アタシが作ったものより、アスカが作ったもののほうがおいしぃのにぃ」
「……甘いもの苦手って知ってるだろ」
「えぇ、だっておぃしいってゆってるじゃなぁぃ」
 毎年、バレンタインにどれだけの苦しみを負っているか、彼女には見せないようにしているのだが。
しかし、あれは甘さの為ではない、とはとても言えない。
 変なのぉ、とぼやきつつも、馨はケーキの箱をいそいそと開ける。
「わぁぁぁ、すごおぉぉい!!」
 ピンクや水色の生クリームで彩られたカップケーキ。1つ1つの頂上には、飴で細工された指輪が乗せられている。
「宝石箱みたぁい!! すごぉぃ、アスカぁっ」
 満面の笑みで恋人を見ると、若干目が泳いでいるが、嬉しそうな微笑みが帰ってきた。
「どれから食べよぉ。ピンクかなぁ。青かなぁ」
 迷い箸ならぬ、迷い手は箱の中を右往左往している。
(……まったく気づいてねぇな)
 予想していたわけではないが、やはり手に持たせないと気付かない雰囲気だ。いや、持たせても気付かずに食べそうだ。
「――馨、これがいいんじゃねぇ?」
  仕方なく、というのもあるのか、アスカは一つケーキを手に取ると馨の左手をとって手渡す。
「んぅ? これぇ?」
迷っていた右手をひっこめると、アスカから渡された『大本命』のケーキを見つめる。
ピンクの生クリームの頂上には、プラチナに一粒のダイヤが輝く指輪が乗っている。
「――へ?」
馨が、間抜けな声を上げる。
パクパクと、続ける言葉を吐こうとするが声のでないまま口を開閉する馨の耳元にアスカが唇を寄せる。
『          』


「で。どこで歯が欠けたのよ」
『言われた後で、照れすぎて思わずケーキ齧っちゃったのぉ!!』
「……さすがの馨の歯も、ダイヤには勝てなかったのね。しかし、アスカさんも可哀想に」
『指輪は壊さなかったもんぅ……。ちゃんと謝ったしぃ……』
「悉く自分の段取りを裏切られ続けてる彼が可哀想って言ったのよ。今回は思惑通りに運ばせたかっただろうに、最後の最後で食べちゃうし」
『飲み込んでないもんぅ!』
「飲み込んでたら切腹ものよ。――まぁ、いいわ。それで、返事はしたんでしょ?」
『……』
 沈黙が流れる。まさか、この期に及んでこの女は――と、ソーマは思う。
『そーちゃに相談しなくちゃぁぁぁって……』
「なんで私に相談する必要があるのよっ!」
 空を舞う大鷲も驚いたであろう叫び声が西海岸にコダマした。
『……ぃぃ?』
 最初のパニックからは想像もつかない程のか細い声。
 彼女は彼女で、ソーマの事を思っていた。
 能力者の力を渡し、戦いの場に引き出したこと。自分を守る為に無茶なことをたくさんさせたこと。
 負わなくてもいい傷も、たくさん負わせてしまったこと。
「……いいわよ、馨。幸せになってね」
『そーちゃぁぁぁぁ』
 涙声が響く。逆さにする必要のなくなった携帯はとうに向きを正常にしていたが、この超音波に鼓膜を直撃され、一瞬己を呪う。
「泣くことないわ。――誕生日おめでと、馨」

 電話を切った後、携帯がメールの到着を告げる。
『馨にプロポーズしたら、すげぇ勢いで『そーちゃに相談しなくちゃぁ』って走ってった。迷惑かけたらゴメンな。――アスカ』
「……一足遅かったわ、アスカさん」
 返信を打とうとすると、再びメール。差出人は、同じ。
『返事貰えた。サンキュ。――アスカ』
 くすりと微笑んで、メール画面を閉じる。まさか断られるとは思っていなかっただろうが、それでも不安だったのだろうか。

 空を見上げる。
 頭上を旋回する鷲を見つけると、ソーマは笑みを浮かべた。
「――おめでと。ずっと、お幸せにね」

 

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