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Moon Child

PBWシルバーレイン内に生息中、暴走弾丸娘ソーマ・アビルーパの戯言保存場所です。 シルバーレインという名前や、PBWという言葉に心当たりのない方、ソーマのお知り合いでない方はお戻り頂いた方が身のためかと。
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2017/06/27
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2009/10/16
01:41
あらしの夜に


10月某日

日本に十数年ぶりと言われる強力な勢力を持つ台風が直撃し、
関東地方も激しい降雨と暴風に見舞われていた。





神奈川県鎌倉市、某ピザ屋。
「さすがにコノ天気だと人も歩いてねーなー」
「そりゃーそうですよ…うぉ…っ、看板飛んでった!!」
外の様子を眺めていた先を、路面に置かれた看板が飛ばされて転がっていく。
「こえー、オレら無事帰れんのかね」
「どーすかねぇ、もー電車も止まってんじゃねーっすか?」
そういって視線を送った先のテレビでは、画面の片隅で随時交通情報が流れている。
「完全に関東地方交通マヒってヤツ?」
「ですよねー。オレ家近いけど、帰るの怖いっす」
「てか、もう店閉めよーぜ、こんな時に誰も注文なんかしてこねーだろし」
「んー、オーナーに連絡してみます?」
トゥルルルルッ
「うぉ、びっくりした!」
受話器を上げようとした途端に先手を打たれたように鳴り出すコール。
アルバイトの男性は慌てて受話器を取り上げた。
「お電話ありがとうございます…」
「てか配達とかじゃねーだろな…こんな天気で無理だぜ?」
電話の内容を察して、センパイのアルバイト店員は電話に出ている後輩に腕でバツを作って見せる。
「ただいま、配達の人間が全員出ておりまして、天候も天候ですので、今日は配達は……
え?えぇ、いや…でも…」
バツ印と電話機を交互に見ては困ったように頭を掻き始める。
「どーした?」
返答に窮したように口ごもった後輩にたまりかねて声をかけた。
「あの…少々お待ちください…」


「はぁ!?無理だって、どーやって行けっつーの!!」
後輩の説明を聞いて声を荒げる。
電話の向こうの話はこうだ。
台風で電車が止まってしまい、そう簡単に帰る事ができなくなった。
そのため、家で待っている子供がおなかを空かせて泣いている。
近所のお店に行くにも、子供では危険すぎるし、まして、家の前にある川が今にも氾濫しそうである。
なんとか、食べ物を届けて貰えないだろうか。
「電話の向こうでお母さん、だと思うんですけど、泣いてて…どーしましょう」
「泣かれてもこっちも無理だって。この雨だし、バイクも走らせるの危ないし、
川なんか氾濫したらマジでヤバイだろ!!」
センパイは興奮気味に叫ぶと後輩になんとか無理だと伝えろと迫った。
仕方なしに保留を解除しようとしたとき、奥から声が聞こえる。
「私が行く。お母さんには、大丈夫と伝えてあげて」
「え、いや、無理だって、女の子にそんなことさせて事故でも起きたら俺が…」
センパイ店員は、あわあわと声をあげる。
その言葉が耳には届いていないように彼女は調理の準備をし始めた。
その様子を見て、電話の保留を解除すると電話の相手に承った旨を伝えた店員は、
黙々と調理を続ける女性、ソーマに声をかける。
「ホントに大丈夫か?さっきだって看板飛んでったし、怪我でもしたら」
「大丈夫、風と喧嘩するのは得意だし」
ピザソースを流しトッピングを散らしチーズを乗せるとソーマは微笑んだ。

程なく焼きあがったピザを箱に入れ、万が一のためにビニール袋で頑丈に封をする。
自らはしっかりと合羽を着込んで、ソーマは二人に声をかけた。
「じゃあ、行ってきます」
「何か起きたら、必ず連絡しろよ、ココで待ってるから」
「平気。こんなこと、いつもに比べたら…」
普段自分の身の回りに起こってることに比べたら、なんてコトはない。
けれど、こんな事でも恐怖に怯える人も居る。
自分の子供の事を思って、泣いている人も居る。
「いつも?」
「あっ、い、いえ、なんでも…。とにかく、行ってきます」
思わず出てしまった独り言を慌てて取り繕うと、ソーマは外へと飛び出した。
ゴオッっという暴風が身を包み、体に打ち付けるように雨が降り注ぐ。
「風はともかく、雨はあんまり好きじゃないのよね」
とは言うものの、この状況はありがたい。
暴風雨の中、外にいる人間などほぼ皆無。
外を見ていても酷い有様で、空を飛んでいる人間が居たとしても、見えるわけはない。
「今行くからね。お腹いっぱいにしてあげる」
呟くと、店舗の屋根へと飛翔する影があった。

幼い頃、決められた作戦を成功させられなければ、食事は与えられなかった。
その時の飢えた感覚、内臓の軋みを、まだ自分は覚えている。
食べれなくなって最初の空腹が一番辛い。
助けなければ、そう思った。

10月某日、台風の鎌倉市。
空を舞う人影を見た人が居たとか居なかったとか。


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