2024/03/29 05:23 |
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2010/03/20 11:36 |
贈り物 |
ごそごそ。
綺麗にラッピングされた包みを開ける。
壊さないように、破かないように。
この紙やリボンたちだって、大切なものだから。
「わ。」
取り出したのは月を模った小型のランプ。
テーブルに置くと早速火を灯す。
「今は夜じゃないけれど、折角だから良いわよね?」
呟きとともに、ソーマの顔を紅く光が照らす、柔らかな灯りに自然と笑みが零れた。
次の包みからは小さな箱。
箱にもリボンがつけられた其れは、そっと開けると中から雛菊が顔を出す。
「暖かそう」
くれた人の笑顔のようだ、と思い、そっと耳に手を伸ばす。
普段つけているピアスを外して、雛菊が耳もとで輝いた。
透明な袋にかけられた金色のリボン。
そっと解くと、色とりどりの包装紙が巻かれた珠が連なるブレスレット。
「あら、これって…」
包装紙を一つ剥いてみると、なんとキャンディ。
口に放り込むと「甘い」と微笑んだ。
恐らく数日後には腕につけることは叶わなくなるに違いない。
青い包装紙に包まれた箱から出てきたのは、
「がおー」
と言いそうな虎の根付。
強い眼差しが自分をきっと勝利へと導いてくれる。
そう思ってイグニッションカードを手に取ると、
取り出した電光剣の柄に着ける。
「負けないわ、貴方が居る限り、ね」
虎の顔を指先で弾くと、小さく決意を呟いた。
「さて…、これ、やけに大きな包みよね」
気がつけば部屋の前においてあった大きな包みには手紙が入っていて、
読めばどうやら二人の方からの贈り物、らしい。
にしても、大きすぎないか?とこれも丁寧に包みを開けてみる。
「わ、わーっ!」
中から出てきたのは、武装ジャケット。
以前も着ていたことがあるけれど、これは更に強く、軽く。
まるで贈ってくれた二人のようだと思う。
「いつのまに聞こえてたのかしら…」
確かに先日部屋の中で「HP600の防具がほしい」とは叫んでいたのだけれど。
まさか聞かれているとは思っていなかったので、若干気恥ずかしくもあったり、
でも、とても嬉しかったり。
にこりと微笑み、小さくガッツポーズ。
『かさり』
部屋中に広がった包装紙をたたんでいると、もう一つ箱が現れた。
今は結社も別になってしまったけれど、大切な友人から貰ったもの。
彼女には、美しく長い髪に似合うようにと、紫蘇輝石があしらわれたリボンをプレゼントしていた。
「あ”!」
開けた箱から出てきたものを見て、頬が朱に染まる。
「す、スー…、またしても…っ」
わなわなと震える手。
その震えは肩から全身へと広がり、染まった頬が更に赤くなるのは照れなのか怒りなのか。
「そま、大丈夫……?」
襖をぽふぽふとノックする。
『わー』とか『あ”!』とかいう声が聞こえた隣室の世良が何事かと様子を伺いにきたのだ。
返答がないままの室内に、「心配だから」と世良が襖をあける。
「ぎゃーっ!!ハティさんっ」
世良の姿を見て取ったソーマから叫び声があがる。
其処には、耳には雛菊、手首にはキャンディのブレスレット。
片手に虎の根付のついた電光剣、勇ましい武装ジャケットに身を包み―――。
ポニーテールに結い上げた髪にさくらんぼが浮き出るサテンの薄い桃色のリボンをつけたソーマが
真っ赤な顔をして立っていた。
「…………」
その姿に釘付けになり、世良が次の言葉を繰り出すのに数分かかったとか。
「素敵な贈り物、ありがと。どれもこれも、嬉しいものでした」
これは、なかなか言えない恥ずかしがりの心の声。
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